東京体育学会
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「会長挨拶」

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東京体育学会

会長  沢井 史穂

    (日本女子体育大学)

2020年に始まった新型コロナウイルス感染症のパンデミックと、それに伴う急速な情報通信技術の発達による社会のデジタル化の進行やAIの進歩など、ここ数年の間に社会は著しく変化し、人々の生活環境は大きく様変わりしました。働き方も学び方も日常の暮らし方も、従来の方法論が通用しない新しいスタイルに変容しつつあります。その影響は、よい面と悪い面の両方に及んでいるといえるでしょう。たとえば、集合型の会議や授業に代わり、オンラインやオンデマンドでの情報伝達が日常化したことにより、時間と経費は大きく節約できるようになりましたが、同時に人々の労力(身体活動量)も大幅に削減され、運動不足どころかエネルギー消費量が1.5メッツ以下の「座位行動」時間が急増しました。その結果、あらゆる年齢層において、健康への悪影響が少なからず生じていると考えられます。

加えて、私たちが暮らすこの国は、少子超高齢化が年々進行しています。合計特殊出生率は減少の一途を辿り、過去最少(2023年の全国平均1.20、東京都の平均は0.99)を更新している一方で、65歳以上の老年人口割合は総人口の1/3に達しています。また、死者数も過去最多となり、人口減少幅も過去最高を記録し続けています。このような人口構成の変化は、世代ごとの新たな健康問題-運動体験の不足がもたらす子どもの基礎的運動能力の未習熟、青少年のスポーツ実施状況の二極化、高齢者のフレイルなど-を生み出しています。このような社会情勢である今こそ、我々学会員は体育・スポーツ・健康づくりの価値を改めて認識し、それぞれの新たな課題解決に向けて取り組んでいかなければならないと強く感じます。

東京体育学会は、日本体育学会の東京支部として活動していたものから平成21年(2009年)に独立学会となって「東京体育学会」に改称し、今年で17年目を迎えます。これまで、船渡和男会長と田中重陽理事長が3期にわたって長らく本学会の舵取りをして下さいましたが、本年度からは会長を沢井史穂、理事長を柏木 悠が担うこととなりました。初代会長の金久博昭先生から故角田直也先生へ、そして深代千之先生、船渡和男先生へと引き継がれたバトンを受け取った責任と誇りをしっかりと抱え、歴代の先生方が築かれた功績を礎として本学会の更なる発展を目指していきたいと思います。東京体育学会は、専門分野の垣根を設けず、人文科学、社会科学、自然科学のすべての分野における研究成果の発表の場を提供しています。また、本学会の大きな特徴は大学院生を中心とした若手研究者の育成を積極的に行っている点にあります。本学会員の若手研究者への「若手研究助成」制度を設けているほか、学会大会には院生だけでなく学部生の発表も認めています。さらに、東京以外の地域の方でも学会員になることができますので、日本中どこからでも学会活動に参加できます。

 時代が移り変わり、人々のライフスタイルや価値観が多様化しても、身体をよりよく保ち、磨き、鍛えることへの興味は消えることはないでしょう。東京体育学会は、スポーツ科学の研究を通して地域の活性化につながる活動を展開していきます。会員の皆様方の積極的なご参加・ご協力をお願い申し上げます。